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2015年(平成27年)に施行された「空き家対策特別措置法(空き家法)」
増加する空き家問題を解消するために制定された法案ですが、空き家を所有している方たちに大きな影響をあたえています。
法律ってむずかしいし、よくわからない。
そう思って空き家を放置していると、場合によっては罰則や、固定資産税が6倍になるなど、優遇措置が停止される可能性もあり、予想外の出費にみまわれないためにも、要点を理解して対応しておく必要があります。
この記事では、空き家の所有者が行政指導や行政処分を受けないために、知っておくべき「空き家法」に関する必要な情報をまとめています。
相続などで急に空き家を所有することになった方など、空き家の管理にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
空き家対策特別措置法(空き家法)とは
正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法」ですが、主に「空き家対策特別措置法(空き家法)」と呼ばれ、平成27年2月26日に施行、同年5月26日から実施されています。
「特措法」や「空家法」と表現されることもあり、また別の法律なのではないかと混乱してしまうかもしれませんが、どれも意味合いは同じです。
使用されず放置された空き家が原因となって発生する、火災や倒壊、治安の悪化など様々な弊害を防止するために定められ、国が危険だと判断した空き家に対して、下記の3点を行うことが可能となりました。
- 空き家所有者を把握するための納税情報の利用
- 空き家への立ち入り調査
- 空き家所有者へ管理の指導や勧告
1.空き家所有者を把握するための納税情報の利用
空き家の問題を解決するためには、まずは所有者を特定する必要があります。
「登記上の空き家の所有者が亡くなっており、実際は親族などが相続している」など、さまざまなケースがありますが、固定資産税の情報を行政が利用できるようになったことで、状況を迅速に把握し、今まで以上にスムーズに対策が進むようになりました。
2.空き家への立ち入り調査
以前は所有者へお願いしなければ、空き家への立ち入り調査を行うことができませんでしたが、行政の権限が増加したことにより、市町村の判断で空き家への立ち入り調査ができるようになりました。
3.空き家所有者へ管理の指導や勧告
空き家の所有者に対し、市町村が助言や指導をできるようになり、なかでも危険と判断された空き家は「特定空き家」と指定されます。
特定空き家に指定された場合、状況に応じて税制優遇措置を除外されたり、罰金などの対象となるケースもあります。
助言や指導を行ったにもかかわらず、空き家の状況が改善されない場合、勧告や強制撤去も含む行政代執行が行われる可能性もあります。
空き家対策特別措置法(空き家法)ができた理由
空き家問題は深刻化しており、その数は年々増加しています。
2019年発表された情報では、全国に864万件もの空き家が存在していることが確認され、2033年には全国の空き家数が2,000万件を上回るのではないかと推測されています。
空き家が増加する背景には、建物を取り壊して土地だけにするよりも空き家のままにしておいた方が、最大で1/6まで固定資産税の優遇を受けられることなどが挙げられます。
土地だけになったほうが固定資産税が高く、建物の取り壊しにも費用が発生するため、空き家のままにしておいたほうが、手間が無くメリットが大きいように感じます。
しかし、管理されず老朽化した空き家は地震などで倒壊する危険性もあり、ゴミや廃棄物を投棄されたりすることで、衛生面や治安の面でも問題となります。
そのため、危険な空き家から地域住民を守るために、空き家対策特別措置法(空き家法)が施行されました。
「特定空き家」に指定される条件
「特定空き家」に指定され罰則の対象とならないためには、特定空き家に指定される条件を知っておくことが大切です。
まず、空き家の定義ですが、
「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)」
と、空き家対策特別措置法で定められています。
要約すると、その建物に人の出入りや、電気・ガス・水道などの利用が1年を通して確認できない場合、使用されていないと判断し「空き家」に該当するということです。
そして、特定空き家に指定される判断基準は4つあります。
- 倒壊の危険性がある
- 衛生上有害である
- 著しく景観を損なう
- 生活環境を著しく乱す
「倒壊の危険性がある」とは?
具体的には台風や地震など、自然災害が発生した場合に倒壊や、屋根・壁がはがれて飛んでくるなど、周囲に危険を及ぼす可能性が高い建物を差します。
「衛生上有害である」とは?
ゴミが放置されていたり、異臭がする、害虫・害獣が発生している状態などがあげられます。
「著しく景観を損なう」とは?
外壁に落書きされている、ガラスが割れている、ゴミが散乱している、ひどく汚れているなど、治安の悪化に影響を及ぼす可能性が高い建物などが該当します。
「生活環境を著しく乱す」とは?
立木がはみ出したり、腐朽、倒壊、枝折れしている、動物の鳴き声がする、不審者が侵入しているなど、近隣住民の安全な生活に実害が出ている場合などが該当します。
特定空き家の条件についてさらに詳しく知りたい方は「特定空き家等に対する措置」のガイドラインで詳細を確認できます。
「特定空き家」指定された場合の措置と対処法
「特定空き家」の指定は立ち入り調査ののち行われ、原因となっている状態が改善できれば解除されます。
特定空き家に指定されると、まずは自治体から改善のための助言・指導があり、この時点ですぐに自治体へ改善を行う意思を伝え、実行できれば大きな問題にはなりません。
助言・指導の段階で改善の意思がみられない場合、行政からの指示は命令・勧告へと段階が上がり、状況が改善されるまで固定資産税の優遇措置が適用されず、従来の土地の税金に対し、最大で固定資産税を6倍、都市計画税を3倍支払う必要があるほか、命令に対し違反をした場合には50万円以下の罰金の対象となります。
命令・勧告ののち、空き家の所有者では改善できないと判断された場合、行政が所有者のかわりに対処する「行政代執行」が行われる可能性があります。
行政代執行の内容は状況に合わせて変化しますが、最大で強制的に取り壊しを行う権限を持ち、その際に発生した費用は最終的に所有者に請求されることになります。
特定空き家について、さらに詳しくはこちら
まずは「特定空き家」に指定されないように空き家を管理すること、そして万が一「特定空き家」に指定されてしまった場合は、助言・指導の内容に沿って速やかに改善を行いましょう。
まとめ
空き家対策特別措置法(空き家法)が施行された理由や、所有者に関係する措置や対処法を紹介しました。
空き家の管理は大変かもしれませんが、長期間放置し状況が悪化することで、「特定空き家」に指定され、行政を巻き込んで大きな費用が発生し、管理を行う以上に大変な思いをしてしまう可能性があります。
使用予定がなく管理し続けることが苦になってしまうようであれば、空き家バンクなどを活用し、資産価値の高い、なるべく新しく綺麗なうちに売却を視野に入れるのも一つの方法です。
また、売却以外にも賃貸や民泊などの宿泊施設として、運用できる場合もあるので、一人で悩まず空き家についてどのようなお悩みをお持ちなのか、ぜひお気軽にご相談ください。