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今回は、死と向き合う重いお話です。
動物福祉の論点とも考えられる安楽死。
反対意見もよく耳にしますよね。
ペットの最期に安楽死を選択するのは悪いことなのでしょうか。
タブーとして、普段はあまり語られることのない「ペットの安楽死問題」を、殺処分と比較しながら考えてみましょう。
安楽死と殺処分は一緒ではない
安楽死と比較共にされることがあるのが殺処分です。
ペットの安楽死は、獣医師さんが薬剤を使い、安らかに死を迎えさせます。
一瞬で眠らせる薬剤を投入するので、ペットが苦しむことはありません。
一方、殺処分は保健所で行われます。
数匹をまとめてガス室に入れて二酸化炭素などを使い窒息させます。
ガスが体を巡るのに数分はかかるため、その間は苦しさを感じるでしょう。
安楽死と殺処分はどちらもペットに死を与える行為です。
殺処分は道徳的にいけないことだと認知が広まっていますが、安楽死はどうでしょう。
安楽死は「ペットの命の尊厳を守るために必要なもの」との考えもあれば、「人間の手で殺すより自然死をさせた方がよい」との考えもあります。
獣医師さんの中でも悩ましい問題であり、度々議論にあがります。
できるなら安楽死の選択はしたくはないけど、飼い主さんとペットのことを思って処置を引き受けている獣医師さんが多くいるのです。
現在、ペットの安楽死は、日本の法律で制限されていません。
日本の「民法」では、動物は有体物として「動産」に含まれているためですね。
例えば、ドイツでは民法に「動物は物ではない」と書かれています。
そのため、安楽死の決断は、処置を施す獣医師さんの裁量次第となっています。
どんな状況で安楽死の選択肢がでてくるのか
安楽死は、ペットに苦しみを与えない行為といっても、死を迎えさせることに変わりありません。
愛するペットに自ら死を迎えさせるなど、考えたくもないことです。
では一体、どんなときに安楽死の選択肢があがるのでしょうか。
考えられる状況はこちらです。
- 不治の病で治る見込みがない
- 慢性的な持病があり治療費を払い続けるのが難しい
- 動くのもつらいほど大ケガを患っている
- 高齢化や認知症で徘徊や無駄吠えなどの問題行動が激しい
- 環境の変化でペットのQOLの低下が著しい
犬や猫などペットの寿命は延びています。
高齢化にともない、さまざまな病気が発症したり、ケガを負うリスクが増えました。
介護のためにかかるお金もあるでしょう。
治療費や介護費を払えるか払えないかは、家庭の状況によります。
100万円の治療費を払える方もいれば、10万円の出費が厳しい飼い主さんもいるでしょう。
治療費を払い続けられるのなら、安楽死の選択が出てくることはありません。
苦しい選択を迫られることがないよう、費用はしっかり確保しておくべきだといえます。
ペットを迎え入れる際は、治療費を支払えるかどうか、保険に加入するかどうかも吟味して飼うべきでしょう。
しかし、問題が起きてしまったことは仕方がありません。
今の状況に照らして、ペットにとって最善と思える選択をしたいものです。
費用ではなく問題行動が原因の場合は、はやまって安楽死を選ぶのはおすすめできません。
病気など治る見込みがないケースを除き、ペットの問題行動は治せる可能性があります。
安楽死はあくまでもペットを苦しみから救う手段のひとつです。
飼い主さんの努力次第で改善できるなら、安楽死より最善の選択が見つかるかもしれませんよ。
ペットの問題行動については、こちらの記事もチェックしてみてくださいね。
注意したい点は、「飼育が困難だから」など飼い主の都合で保健所へ連れて行ったり、安楽死を選択したりしてはいけないこと。
ペットは命ある存在です。
お世話を放棄して安楽死を選択するのは、安楽死ではなく殺すのと同じです。
飼い主として、責任をもった行動をしましょう。
安楽死の方法や費用とは
安楽死は、獣医師さんが処置室へとペットを運び、リラックスした状態をつくってから薬剤を投入します。
あらかじめ、麻酔を打ってから薬剤を投入する場合もあるでしょう。
飼い主さんは、ペットが最期の意識を保っているところに立ち会えます。
愛犬や愛猫がゆっくりと眠っていくのを、やさしく撫でて愛おしんであげてください。
安楽死の薬剤は穏やかに眠りにつけるので、苦しむ姿を見ることはありません。
それでも最期を見るのが怖い方は、無理をしなくて大丈夫です。
安楽死にかかる費用は1万円ほど。
これはあくまで目安であり、動物の種類や大きさ、動物病院によって異なります。
獣医師さんに安楽死の相談をしたときに、質問するとよいでしょう。
安楽死をさせるまでのペットとの過ごし方
安楽死をすると決断したら、それまでの期間をどう過ごせばいいのでしょうか。
いくつかあげているので、参考にしてみてください。
- 思い出をつくる
散歩の風景を動画に残したり、遊んでいる写真を撮ったり…。
ペットの姿をデータに残すのは、日頃からできることでしょう。
データの思い出を物として残すなら、アルバムがおすすめです。
- 愛情を与える
ペットにとって愛情とは、お金や物ではありません。
飼い主さんの笑顔やコミュニケーションをとることが、何よりも大切な愛情表現と受け取ります。
残された少しの時間を、スキンシップやマッサージなどの触れ合いのために使いましょう。
ながら作業ではなく、しっかりと向き合う気持ちが大切ですよ。
- 終活の記録を残す
この世を去ってしまうペットの記録を振り返るのも大切な時間です。
愛犬や愛猫のプロフィールから、初めての出会いや楽しかったことなどを書き留めておきましょう。
記録用には、ペットのエンディングノートが販売されています。
- 残ったペット用品を団体へ寄付する
愛犬や愛猫がこの世を去ったら、残ったペット用品を処分すると思います。
その際、自治体や愛護団体に寄付をしてみてはいかがでしょうか。
お金でなくとも、タオルやペットシーツなどの物資の支援でもありがたいものです。
これから幸せに暮らす犬や猫たちのために、自分の力が少しでも役立つのは嬉しいですよね。
殺処分問題に取り組んでいる自治体や団体については、こちらの記事で紹介しています。
ぜひチェックしてみてくださいね。
また他にも、事務的な作業としてこれらの準備をしておきましょう。
- ペット保険の解約
- 死後の供養や葬儀について
- 死亡届の提出(犬のみ)
安楽死を後悔しないために
安楽死は、ペットに苦しみを与えない眠らせ方です。
また、処置を施すのは飼い主さんではなく、獣医師さんです。
飼い主さんが気を病むことはありません。
しかし、「自分の決断で命を奪ってしまった、悪いことをした」と後悔する方もいることでしょう。
安楽死を後悔しないために、安楽死の意義について考えてみましょう。
安楽死は、個人によって意見が異なる複雑なテーマです。
そのため、自分で自分を納得させるしかありません。
あなたは何のために安楽死を選択しましたが?
悪いことのため、愛犬や愛猫を苦しめるためでしょうか?
ペットを愛する方が決断する安楽死は、ペットを思いやってのことでしょう。
命あるものはいずれ死を迎えます。
苦しい思いで死を迎えさせるより、穏やかな気持ちで看取ってあげたいと安楽死を選びますよね。
その気持ちは、ペットを尊重したあたたかい心です。
結果として「死」を迎えたとしても、その過程は決して悪いことではありません。
ペットを心から愛するあなた自身が決めたことなら、そのあたたかい自分の心を認めてあげましょう。
気持ちの整理ができると、安楽死を後悔せずに心を落ち着かせられます。
それでもペットロスは避けられないかもしれません。
愛するペットの死を乗り越えるために、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。
まとめ
安楽死は殺処分と異なり、「命の尊厳を保つ」という道徳的意義があります。
死を決断するのは心苦しいことですが、「ペットにとって最善の選択は何か」を考えて出した結果なら、誰も飼い主を責めることはできません。
安楽死を選択するもしないも、後悔のない選択をしたいものです。
愛するペットのことを思い、しっかりと自分の頭で決断するのが大切ですよ。