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2020年10月。島根県出雲市の個人宅で、多頭飼育崩壊がありました。
164匹の犬が、約8畳の部屋で生活。
部屋には排泄物が散乱しており、一部の犬はこれを食べてしのいでいたといいます。
なんとも悲しいニュースです。
犬たちは充分なエサを与えられていたのでしょうか?
満足に運動ができたのでしょうか?
ペットの幸せを考えると、胸がつまる思いですよね。
参考サイト:読売新聞 8畳2間に犬164匹…「まるで満員電車」多頭飼育崩壊か 2020/10/29
今回はこのニュースに関連して、多頭飼育崩壊を考える記事になっています。
多頭飼育崩壊はなぜ起こるのか、どうしたら解決できるのか一緒に考えていきましょう!
多頭飼育崩壊の現状を整理する
多頭飼育崩壊は、ペットに不妊・去勢手術を行わず、無計画に飼っていることにより発生します。
結果、お世話できないほどに数が増え、環境も経済状況も破綻するのです。
多頭飼育の問題は、どんな状況でどれくらいの数を飼育していたかによって異なります。
たとえば、高齢者のひとり暮らしで犬10匹を飼っているケースと、三世帯家族で犬3匹・猫7匹を飼っているケース。
どちらも同じ10匹の多頭飼いですが、飼い主1人あたりで考えると違った見方ができますよね。
しかし、多頭飼育崩壊の定義は、数だけではありません。
10匹のペットをきちんとお世話し、それぞれ健康的な状態が保てているのであれば問題にはなりません。
排泄物がそのままの劣悪な環境だったり、すべてのペットにエサを与えていなかったりと、お世話が行き届いていない場合、多頭飼育が崩壊している状況だといえます。
本来なら、このような事態になる前に対処できるのが理想です。
しかし、対処できていないから社会問題となっています。
ペットの飼育に関しては、基本的に個人の自由が大きい。
ましてや、具体的に頭数が定められているわけでもないため、行政は口を出しにくいんですね。
飼い主個人が多頭飼育の問題を理解していないと、対処はさらに難しくなります。
また、対処できたとしても、新しい里親が見つからなければ犬や猫には「殺処分」が待っています。
多頭飼育崩壊の問題は、対処した後もつながっているといえるでしょう。
犬や猫の多頭飼育崩壊がおこる原因とは?
多頭飼育崩壊がおこる飼い主の特徴は、大きく分けて3種類です。
・ブリーダーパターン
ブリーダーとは、動物の繁殖をおこない販売している業者のことです。
業者といっても、個人宅でおこなっていることも少なくありません。
ブリーダーは犬や猫を繁殖させて収益を出しています。
当然、人気のある種はたくさん繁殖させたいものです。
しかし、時代の流れで人気種が変わると、繁殖した子犬や子猫が売れない事態が発生します。
これにより経営破綻し、多頭飼育崩壊がおこるケース。
他にも、アニマルカフェなど動物をたくさん抱えている業者などで経営破綻がおこり、お店に動物たちが放置されるケースなどもあります。
どちらにしろこのタイプは、ブリーダーや動物関連会社など、もともと多頭飼育をおこなっている業者が問題を引き起こすパターンです。
・アニマルホーダーパターン
アニマルホーダーとは、依存症や収集癖といった精神疾患のひとつ。
動物が好きでペットを飼い始めたものの、お世話できないレベルまで数が増えても手放せない精神状態のことです。
アニマルホーダーは「動物好き」が転じ、引き取り手のいないペットを保護してあげようという気持ちからきています。
また、動物に対し不妊・去勢手術を施したくない思いも重なり、多頭飼育崩壊を引き起こしてしまうのです。
そのため、多頭飼育が崩壊状態になっていても「自分は虐待なんてしていない!」と思い込んでいることも少なくありません。
環境の悪化などが近隣住民の迷惑になっていることに気づいていないケースもあります。
・ボランティア崩壊パターン
民間の動物愛護団体や個人の動物愛好家などが、飼育崩壊を起こした飼い主を助け、逆に自分が多頭飼育崩壊を招いてしまうパターンです。
いわゆる二次崩壊ですね。
ボランティアは善意の活動ですが、自分で保護できる数までに止めておかないと、動物に不幸をもたらします。
また「これくらいの数なら大丈夫」と適正に飼育できていても、飼い主の病気や突然の事故などにより、お世話ができなくなるケースもあります。
飼育数が多くなればなるほど、自分の代わりに引き取ってくれる知人を見つけるのも大変なものです。
今は飼えると思っていても、この先自分に何かあったときにペットたちの面倒はだれが見るのかまで考えておかないと、このような事態になります。
多頭飼育崩壊を防ぐ解決策について
自分がお世話できる以上のペットを飼うと、ペットも自分も苦しい思いをすることになります。
多頭飼育が崩壊につながらないために、どのような解決策があるのか考えてみましょう。
・不妊・去勢の手術を行う
多頭飼育崩壊がおこる原因のほとんどが、不妊や去勢の処置をしていないことによるものです。
猫の繁殖力の高さはこちらの記事でもご紹介しました。
繁殖を望まない場合は、不妊・去勢手術をする。
これは、現代の動物福祉の考えに照らすと飼い主の義務ともいえますよ。
人間と異なる繁殖力をもつ犬や猫の飼育については、正しい知識をもつことが大切です。
犬や猫それぞれの個体の状態にもよりますから、必ずしもすべてのペットに手術をさせた方がよいわけではありません。
何も考えずに手術を放置していたり、なんとなく手術をさせない選択をすると、多頭飼育崩壊を招く危険があると知っておきましょう。
「手術に抵抗はないけど、手術代が払えない」
このように、経済的な理由から手術を行えない方もいるかもしれません。
愛護団体や自治体によっては、不妊・去勢にかかる手術代を補助してくれることもあります。
そのため、お住まいの都道府県や市区町村や、近くの動物病院・団体などをチェックしてみましょう。
・飼う前によく考える
これは、多頭飼育崩壊を起こさないための第一歩です。
まずは、ペットを飼う前によく考えましょう。
「毎日のご飯を用意できる」
「散歩に連れていける」
「ペットOKの家だから大丈夫」
これらは基本的な考えです。
もちろん、これらをクリアしていないと、ペットを飼えませんね。
「よく」考えるとは、さらに先のことをいいます。
先ほど、不妊や去勢をするための手術代が払えない方もいるとお話しました。
考えてほしいのはこういうところです。
「不妊・去勢を行う手術代金はあるか」
「ペットが病気やケガに遭ったとき、すぐに病院へつれていけるか」
「自分に何かあったときに、代わりにお世話をしてくれる信頼のおける知人はいるか」
このような事態を想定し、それでもペットと自分が一緒に暮らすことが幸せだと思えたら、飼い主として立派といえますよ。
多頭飼育崩壊の解決策の根幹は、この「飼う前によく考える」ことだといえるでしょう。
・飼い主本人の精神的治療
これは主にアニマルホーダータイプの解決策です。
アニマルホーダーは、ペット自身の繁殖に関わらず次々に新しい動物を保護します。
周囲の迷惑を客観的に考えられない状態にもあるので、福祉の専門家と治療を進めていくほかありません。
多頭飼育崩壊の解決には、動物側の不妊や去勢以外にも、人間側が変わっていかなければならない事情もあるのです。
もし多頭飼育崩壊を見つけたらどこに通報する?
近所の家やアニマルカフェ、ブリーダーの家などで、このような傾向が見られたら注意しましょう。
「たくさんの犬の鳴き声がすごい」
「人が住んでいる気配はなく、動物臭のひどい家がある」
「狭いケージに閉じ込められ、極度にやせ細っている」
多頭飼育崩壊に陥っている方は、後ろめたさから誰にも相談できない状態にあることも少なくありません。
そのため、「何かおかしいぞ?」と気づいた方が、然るべき機関へ連絡してあげた方がよいでしょう。
通報先の機関は、保健所や動物愛護センター、自治体の動物愛護担当窓口や衛生課など。
一般社団法人 日本動物保護センターによる「エリア別・全国の動物虐待通報先」にきれいいにまとめられているのでご紹介します。
まとめ
多頭飼育崩壊の要因は、飼い主の個人的な理由によるものから、精神疾患、ボランティア精神が転じてなどさまざまです。
相談できる相手がいないことから多頭飼育崩壊を招いてしまう場合も少なくありません。
大切な動物の命を社会全体で支えていけるよう、ペットを飼っていなくても意識を向けたい問題です。
そして、これからペットを飼おうとしている方は、飼育崩壊につながらないかよく考えてから迎え入れましょう。
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