障がい者雇用に関する制度や注意点について(事業主向け)

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今回は、障がい者雇用に関する制度や、障がい者を雇用するメリット、注意点などをご紹介します。

「私たちの会社で障がい者を雇用するメリットってあるのかな?」

「障がいのある方を採用したが、どのような点に気をつければいいのだろう」

このような疑問をお持ちの、中小企業の事業主や採用担当者の方は、ぜひご覧ください。

 

障がい者雇用の現状と対策

まずは、雇用されている障がい者の現状と、障がい者の雇用を支援する国の取り組みをみていきましょう。

 

<障がい者の雇用の現状>

厚生労働省が公表した「令和元年 障がい者雇用状況の集計結果」によると、民間企業における障がい者の雇用者数は56万人。

実雇用率は2.11%に達しました。

雇用障がい者数、実雇用率ともに過去最高を更新しています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08594.html

障がい者の雇用対策

厚生労働省による施策の目標はこちら。

”障がい者等が希望や能力、適性を十分に活かし、障がいの特性等に応じて活躍することが普通の社会、障がい者と共に働くことが当たり前の社会を目指し、障がい者雇用対策を進めています。”

【引用:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index.html

この対策として、以下の制度が実施されています。

 

・ 障がい者雇用率制度

障がい者雇用促進法において定められており、事業主は、法定雇用率に相当する人数以上の障がい者を雇用しなければならないとする制度です。

 

こちらは、現在の法定雇用率。

民間企業 2.2%

国・地方公共団体 2.5%

都道府県の教育委員会 2.4%

となっており、2021年4月までには、さらに0.1%引き上げられる計画となっています。

 

・ 障がい者雇用納付金制度

障がい者の雇用は事業主が共同して果たしていく責任であるとし、事業主間の経済的負担の調整を図るとともに、障がい者を雇用する事業主を援助する制度です。

法定雇用率が未達成の事業主からは、納付金を徴収します。

そのお金を、法定雇用率より多くの障がい者を雇用している事業主に調整金として支払ったり、障がい者雇用において必要な設備などの助成に充てたりしています。

 

障がい者を雇用することのメリット

障がい者を雇用することは、制度に従うだけでなく、企業にとってプラスの効果をもたらすことをご存知ですか?

 

助成金を受け取ることができる

・ 特定求職者雇用開発助成金

ハローワーク等の紹介により、障がい者を継続して雇用する事業主に与えられる助成金です。

障がい者雇用の経験がない中小企業で、初めての雇入れにより法定雇用率以上の障がい者を雇用した場合、 120 万円が支給されます。

(金額はコースにより異なります)

 

・ トライアル雇用助成金

ハローワーク等の紹介により試行雇用を行う場合にもらえる助成金です。

 

・ 障がい者雇用安定助成金

職場適応援助者による援助を必要とする障がい者のために、支援計画に基づき支援を実施するともらえる助成金です。

雇用に関するこれらの助成金以外にも、施設の整備を行った場合や、能力開発をした場合、職場定着のための措置をした場合なども、助成金をもらうことができます。

【参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/intro-joseikin.html

 

企業の価値が高まる

近年、ESGやSDGsをもとに、ダイバーシティ経営の関心が高まっています。

そこで企業は、多様性のある職場づくりを目指そうと「ジェンダー」や「ナショナリティ」に注目してきました。

「障がい者」もその側面をもっています。

社会問題への取り組みの姿勢は、優れた企業として長期的な利益追求につながります。

現在のグローバル経済では、短期的な利益だけを追及する企業は、生き残れないともいわれています。

障がい者雇用は、長期的な経営を考えるとメリットといえるでしょう。

 

戦力になる高いパフォーマンス

長期的な経営といえば、高いパフォーマンスにも注目です。

障がいの特性や区分にもよりますが、雇用した体験談として、シフトを急に休むことはないし、仕事に対して手を抜くこともないといった真面目な点があげられています。

また、退職率も低いことから、採用コストがかからないというメリットも。

仕事の種類と適正が合うと、高いパフォーマンスを発揮できるところも魅力のひとつです。

適材適所に人材を配置する仕組みが整っている職場では、強い味方となります。

 

業務の改善・見直しのきっかけとなる

先ほど述べた適材適所への人材配置は、障がい者の雇用をきっかけに、改善されることがあります。

業務の改善や人材配置の見直しは、全従業員が効率的に働ける職場を目指すことにつながります。

このように、障がい者の雇用はコンプライアンスの姿勢を示すだけでなく、経営において長期的なメリットをもたらすといえるでしょう。

 

障がい者を雇用するうえで気をつけること

これから障がいのある方を雇用しようと考えている、または現在雇用しているが、どのように配慮すればいいのか悩んでいる方へ。

ここからは、雇用上の注意点やポイントをご紹介します。

 

差別禁止および合理的配慮について

障がい者雇用促進法が改正され、平成28年に新しく施行されました。

その際、厚生労働省が公表したポイントは以下の3つです。

 

1 雇用の分野での障がい者差別の禁止

障がい者であることを理由に、排除したり、不利な条件を設けたり、障がいのない人を優先したりすることは差別に該当します。

考えられる場面は、求人募集、採用、賃金、昇進、教育など。

なお、積極的な差別是正として「障がい者専用求人」を出すことは、禁止される差別には該当しません。

 

2 雇用の分野での合理的配慮の提供義務

合理的配慮とは

・募集及び採用時においては、障がい者と障がい者でない人との均等な機会を確保するための措置 

・採用後においては、障がい者と障がい者でない人の均等な待遇の確保または障がい者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置”

のことをいいます。

つまり、障がいのある方に機会の平等を与えるため、特別な措置をすべきで、そのための配慮は、禁止される差別に当たらないということです。

具体例はこちら。

 

・視覚障がいがある方に対し、点字や音声を使った採用試験を行うこと

 

・身体障がいがある方に対し、机の高さを調整するなど設備を整えて、作業を行えるよう工夫すること

 

・精神障がいがある方に対し、休憩や休暇を調整するなど、通院や体調に配慮すること

 

3 相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助

事業主は、障がい者からの相談に適切に対応するために、窓口を設置しなければなりません。

その際は、窓口を労働者に周知すること、相談者のプライバシーを保護すること。

また、相談したことを理由に不当な扱いをすることも禁止しています。

当事者間での解決が難しい場合は、都道府県労働局 職業安定部に相談できます。

紛争解決の援助制度を利用しましょう。

【参照:http://www.jpi.or.jp/pdf/161031_04.pdf

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従業員との関係づくりをサポート

障がいのある方が不快な思いをせず働けるために、上記のような合理的配慮はもちろん、職場内の人間関係に気をつけることも大切です。

障がいのある方を雇用したら、一緒に働くことになる従業員に雇用の目的と配慮内容を伝えましょう。

目的を伝えることで、ともに働く意欲や協力する姿勢が期待できます。

配慮内容は、本人に確認をとって個人のプライバシーに注意しながら、できることやできないこと、配慮してほしいことなどを具体的に共有します。

 

また、コミュニケーションの方法も伝えておくとよいでしょう。

特性によっては、筆談を用いたり、目線を合わせて会話したり、図を使って説明したりと対応が異なります。

細かなコミュニケーションひとつとっても、配慮ができている職場とそうでない職場では、定着率が異なります。

事業主は、障がいのある方と従業員が、良好な人間関係を築けるようにサポートしましょう。

個々の特性に合わせたコミュニケーションの取り方は、こちらの記事で紹介しています。

ぜひご覧ください。

 

 

就労支援・相談支援機関について

気をつけるポイントを理解していても、意外なところでつまずいて、雇用後なかなか思うようにいかないこともあると思います。

そんなときは専門家に話を聞くことをおすすめします。

障がい者雇用に関する地域の支援機関はこちら。

 

・ハローワーク

それぞれの障がいに合わせた職業紹介、指導、求人開拓、助成金関係事務などを行っています。 

 

・地域障がい者職業センター

それぞれの障がい者に合わせた、職業評価・指導・準備訓練および適応援助などの職業リハビリテーションを行っています。

また、事業主に対しては、雇用管理に関する専門的な助言などを行っています。

 

 

・障がい者就業・生活支援センター

就業や、それに関わる日常生活上の支援を必要とする障がいのある方に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問などを行っています。 

 

その他、東京都では「中小企業のための障がい者雇用支援フェア」などが開催されています。

各自治体が、企業向けに障がい者雇用に関する情報提供や相談会を設けていることもあります。

 

【参照:http://www.zenjukyo.or.jp/small_info/2806chubu_ozaki.pdf

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は障がい者を雇用する際に利用できる制度や、注意点を紹介しました。

民間企業の法定雇用率達成割合は 50% を切っており、障がい者雇用への理解はまだ十分とはいえません。

障がいがない人も、そして障がある人も、多様な人々が当たり前に働ける社会を目指せるといいですね。

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