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職場で障がい者と円滑なコミュニケーションを取るには、どうすればいいのか」
このように悩んだことがある人は、多いのではないでしょうか?
今回は、障がいのある方への対応をケース別にご紹介します。
ぜひ、参考にしてくださいね。
障がい者の割合について
まずは、全国の障がい者の割合をみてみましょう。
厚生労働省が「令和元年版障害者白書」で公表した、障がい者の人数はこちら。
- 身体障害者436万人
- 知的障害者108万人
- 精神障害者419万人
複数の障害を併せ持つ方もいるため、単純な計算にはなりません。
しかし、国民のおよそ7.6%が何らかの障害を持っていることになります。
【参照:https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r01hakusho/zenbun/pdf/ref2.pdf】
<障がい者の就労状況>
次に、全国の障がい者のうち、企業に雇用されている方の割合をみてみましょう。
こちらは、厚生労働省が公表した「平成 30 年 障害者雇用状況の集計結果」です。
対象は、従業員数が45.5人以上の規模の企業に雇用されている方になります。
平成30年時点、雇用されている障がい者の数は約53,5万人。
内訳はこちら。
- 身体障害者34,6万人
- 知的障害者12万人
- 精神障害者6,7万人
平成14年から年々増加傾向にあります。
平成30年は、特に精神障害者の伸び率が大きく、前年と比べ34.7%増加しました。
実雇用率は、7年連続で過去最高の2.05%を更新しています。
実際、一緒に働いているという方もいるでしょう。
また、今は職場にいなくても、今後、仕事仲間として一緒に働く可能性はあるといえます。
【参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000533049.pdf】
障がい者が職場で抱える悩みとは
このように、障がい者の雇用は伸びてきています。
それにともない、職場での障がい者への理解も少しずつ広まってきていますが、同時に問題もあります。
厚生労働省が公表した「平成25年度障害者雇用実態調査」によると、「障害者の離職理由」の上位は「職場の雰囲気・人間関係」が占めていました。
こちらは、精神障がい者で1位、身体障がい者で2位の結果となっています。
障がい者も働けるような社会のしくみになってきていますが、人間関係で悩み、辞めてしまう方が多いのも現実…。
これは、制度の問題では解決が難しい、相互理解や配慮の話になってきます。
では、障がいのある方と職場で一緒に働くとき、どのような対応を心がけるとよいのでしょうか。
職場でのコミュニケーションの取り方とは
人間関係が良好な職場は、雰囲気もよく、障がいのある方もそうでない方も働きやすい環境といえます。
人と関係を築くにはコミュニケーションが必要です。
コミュニケーションの取り方は相手によって変えるもの。
上司、お客様、友達、子ども、外国人など対象が変わればコミュニケーションの取り方は変わると思います。
障がいのある方もその中のひとつです。
笑顔で明るく、そして不快な言葉はかけない。
一般的なコミュニケーションにおいても基本的な対応ですね。
それに加えて、「プライバシーに立ち入らないようにする」「困っていたら声をかける」という気遣いができるとよいでしょう。
具体的な配慮は、個人の特性に合わせて異なります。
障がい者の方とコミュニケーションを取るには、まず、特性を理解することが大切だといえます。
ここからはケース別にみていきましょう。
<視覚障がいのある方の場合>
視覚障がい者といっても、全く見えない方や、光は見える方、見える範囲が狭い方など個人によって異なります。
- 対応方法
目からの情報が得にくいため、コミュニケ―ションは声を使いましょう。
周りの状況がつかめていないことがあるので、急に会話を始めるのではなく、自分から名乗るといいでしょう。
また、「あれ」や「こちら」などの指示語を使わず、位置や物の名称は具体的に説明することで、理解の負担を軽くできます。
<聴覚・言語障害のある方>
こちらも、聞こえる程度は個人によって異なります。
また、言語障がいをともなう場合とそうでない場合もあります。
声に出して話していても、聞こえるとは限らないので注意しましょう。
- 対応方法
聴覚障がいのある方とのコミュニケーションは、手話や筆談、指文字などさまざま。
どの方法がいいかお互いに決めておくと、スムーズに会話ができます。
言語障がいのある方とのコミュニケーションにおいて、聞き取りにくい場合は確認しましょう。
聞き返したり、紙に書いてもらうなどして対応することで、お互い気持ちよく働くことができます。
<肢体不自由のある方>
車いすや松葉杖を使用する方、身体のマヒがある方などがこちらに当たります。
補助の種類は身体の部位によっても異なり、マヒのある方の中には、上手く動かせず意思を伝えにくい方もいることに注意しましょう。
- 対応方法
車いすの方との会話は、かがんで目線を合わせるようにしましょう。
見下されると心理的に負担を感じる方もいます。
また、聞き取れなかったら、聞き返すようにするとよいでしょう。
<内部障がいのある方>
内蔵機能の障がいは、見た目では分かりにくいため、周囲から理解を得られないなど心理的負担を抱えている方が多くいます。
障がいのある部位だけでなく、全身的に疲れやすいという特性があります。
- 対応方法
疲労がたまりやすい、集中力や根気にかけるなどの不便さがあることを理解し、負担をかけないようにしましょう。
また、ペースメーカーを埋め込んでいる方は、電磁波の影響を受けると誤作動する可能性があるので、携帯電話などの使用には配慮が必要です。
<知的障がいのある方>
慣れていることは、問題なく丁寧に行動できます。
しかし、未経験なことや慣れない場所、初めて会う人には不安を感じてうまく行動できないことも。
ゆっくりと落ち着く時間が必要になります。
- 対応方法
短い文章で、具体的に伝えるようにしましょう。
図や絵など視覚的なものを使うのも効果があるとされています。
また、一度に多くのことを理解することが難しいため、小さく区切って、やさしく説明するとよいでしょう。
<発達障がいのある方>
脳機能の発達に関する障がいで、落ち着きがなかったり、コミュニケーションが苦手といった特徴があります。
得意分野では優れた能力を発揮することもあるので、仕事内容によってストレスの度合いが異なるといえます。
- 対応方法
遠回しな言い方や曖昧な表現は苦手なので、具体的にどうしたら良いか伝えるようにしましょう。
人付き合いが苦手な面があるので、特に笑顔で対応することを心がけるといいかもしれません。
また、たくさん人がいる会議室や狭い場所などでパニックを起こすこともあります。
この場合、クールダウンの時間をつくり、仕事を再開するか、日を改めるかなど本人の意思を確認して対応しましょう。
<精神障がいのある方>
統合失調症や、うつ病、てんかん、依存症などの精神疾患を持つ方です。
内部障がいと同じく外見からは分かりにくいので、理解されず孤立している方もいます。
ストレスに弱く、対人関係が苦手な方が多い傾向にあります。
- 対応方法
周囲の言動を被害的に受け止め、恐怖感を持ってしまう方もいるので、穏やかな対応を心がけましょう。
また、感覚が過敏な方もいるので、適切な声の大きさ、落ち着いた話し方でコミュニケーションを取ることをおすすめします。
これら、個別的な対応については、夕張市保健福祉課が公表した「障がい特性に応じた対応の具体例について 」を参考にしました。
詳細が気になる方はこちらをチェックしてみてください。
【https://www.city.yubari.lg.jp/kenkofukushiiryo/shogaishafukushi/sabetsukaishou.files/gutairei.pdf】
障がい者に関する公的な相談所について
障がい者が職場での悩みを相談する相手は、「家族」に次いで「職場の人」も上位にきています。
障がいを持つ同僚や部下から相談を受けたとき、自分ではアドバイスできないことや、会社では解決できないこともあるでしょう。
産業医の先生や社内の相談窓口でも対応できない場合は、公的機関に相談してみましょう。
自分で足を運ぶのは難しくても、上司に窓口を案内したり、本人に相談機関を紹介してあげたりすることはできるはず。
ひとりひとりの優しい行動が、職場の雰囲気を働きやすい環境へと変えていきますよ。
以下、相談窓口の一部を紹介します。
- 公共職業安定所(ハローワーク)
雇用分野における障害者差別・合理的配慮の提供等の相談
- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構地域障害者職業センター
障害のある人の就職・職場定着・職場復帰の支援
- 障害者就業生活支援センター
職場への適応、就業に伴う日常生活の社会・生活の悩み等についての相談
- 法務局・地方法務局及びその支局
障害のある人に対する差別、虐待等の人権侵害に関する相談
- 都道府県難病相談支援センター
難病についての全般的な相談
【参照:https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h30hakusho/zenbun/furoku_08.html】
まとめ
いかがでしたでしょうか。
見た目ではわからない「見えない障がい」がある方も、職場では普通に働いています。
コミュニケーションで大切なのは、ひとりひとりに合わせた柔軟な対応です。
上手く通じないからとイライラせず、思いやりをもって接することを心がけてみてくださいね。
障がいをもつ方だといって、行き過ぎた特別扱いをする必要はありません。
普段人とコミュニケーションをとる時の延長線上と捉えて、良好な関係性を築いていってくださいね。