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現代において、精神障がいにより治療を受けている人数は、国内で約420万人にのぼると言われています。(平成29年時点、厚生労働省HPにて)
これは、日本人のおよそ30人に1人の割合になり、生涯を通じて5人に1人が精神障がいにかかるともいわれています。
誰でもかかる可能性があり、自分自身だけでなく、身近の大切な家族や友人、恋人がかかったときのためにも、精神障がいへの理解を深めていきましょう。
また、精神障がいと診断を受けたからと言って、働くことができないわけではありません。
今回は、精神障がいの種類や、雇用状況、向いている仕事と注意点について解説いたします。
精神障がいとは?その種類について
精神障がいはこころの病気ともいわれ、気分の低下、意欲の低下、身体的な不調をも伴い、主に精神的な面で生活に困難をきたしている状態のことをいいます。
その原因についてはまだわかっていないことも多く、科学的には脳の何らかの機能のバランスが崩れているために起こる症状といわれています。
現在の主な診断基準としては、特徴となる症状がどれくらい続いているか、その症状によってどの程度生活に支障をきたしているかを中心に診断名がつきます。
精神障がいの種類としては、主に5つあります。
<統合失調症>
100人に1人弱がかかるとされている、精神障がいのなかでも一般的な病気です。
主な症状として、「幻覚」や「妄想」、「意欲の低下」や「疲れやすい」などがあります。
発生の原因についてはまだ解明されておりませんが、脳の病気ともいわれており、主に薬物療法で治療がなされています。
<気分障害>
気分の落ち込みが著しいうつ状態や、過剰にテンションが高い躁状態など、気分の波が目立つところが主な症状として表れる病気です。
うつ状態のみが表れる場合はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態が交互に表れる場合は双極性障害(躁うつ病)と呼ばれます。
主な治療法は薬物療法となり、また周囲の理解と配慮も必要とされています。
<てんかん>
何らかのきっかけで発作が起こり、発作の症状としてけいれんしたり、突然意識を失ったり、様子がおかしくなったりする病気です。
一時的に脳の一部分が過剰反応することにより、発作が起こるといわれています。
誰もがかかる可能性がある病気ですが、処方された薬を飲むことによって多くの方が一般的な生活を送れます。
<依存症>
アルコールや、薬物、ギャンブルなどに過度に依存し、自らの力ではその行為を止められず、繰り返してしまうことで心身や生活に悪影響が出てしまう病気です。
依存の対象はさまざまで、本人も気づかないうちに依存状態になってしまうこともめずらしくありません。
依存症の専門家に相談し、家族や周囲の理解と配慮を持って見守ることが大切です。
<高次脳機能障害>
交通事故や脳血管障害などの病気で脳にダメージを受けたことによって、精神面や行動面にも障がいが表れる病気です。
主な症状として、「記憶障害」、「注意障害」、「計画的、効率的な行動ができない」、「衝動的、攻撃的になる」、「自分が病気であると気づかずにトラブルをおこしてしまう」などがあります。
専門医に相談し、症状に合わせた対処や治療が必要となります。
以上が主な精神障がいの種類となりますが、そのほかにもさまざまな病気や症状がありますので、少しでも心配があれば専門のお医者様にご相談ください。
精神障がい者の雇用状況
続いては、精神障がいと診断を受けた方の雇用状況について解説します。
障害者雇用促進法により、企業には障がい者の方でも差別することなく、会社の規模に応じて一定の割合の人数を雇用することが義務付けられています。
2018年の法改正によって、精神障がい者も障害者雇用促進法の対象となり、一般企業における採用も大きく増えています。
さらに、2020年には、8時間勤務が難しい障がい者のために、短時間勤務の雇用を支援する法律が新設されました。
一方で、企業に就職したものの、1年後には約半分の方が辞めてしまうといった現実もあります。
精神障がい者の方が、会社を辞める理由は主に以下の5つです。
- 職場の雰囲気・人間関係
- 賃金・労働条件に不満
- 仕事内容が合わない
- 疲れやすく体力が続かなかった
- 症状が悪化(再発)した
上記の理由を踏まえると、就職先が増えた反面、働いたときに直面する課題があることがわかります。
自分に合った職場探しや無理のない働き方ができるように、行政の支援を活用したり、周囲の協力も大切になってくるでしょう。
それでは長く働ける職場を探すにはどうすればいいのか、向いている仕事や選ぶ際の注意点などを解説します。
精神障がい者の方に向いている仕事と注意点について
精神障がい者の方は、その特性によってストレスを感じやすいため、まずは、自身の症状を記録して、周囲にも遠慮せずに伝えていくことが大切です。
就職の面接を受ける際にも、どのような特性があるのか、どのような配慮があれば働きやすいかを前もって伝えておいたほうが、理解が得られやすいでしょう。
また、どのような特性・症状があるかによって、向いている仕事も異なります。
症状別の向いている仕事は下記のとおりです。
<統合失調症・うつ病・双極性障害(躁うつ病)の方に向いている仕事>
一人で黙々と自分のペースで進めることができる仕事が向いていると言われています。
たとえば、事務や経理、システムエンジニア、軽作業やバックヤード業務、農業や清掃員などです。
逆に向いていないとされている仕事は、複数の作業を同時並行でおこなう仕事や、集団行動、チームワークが求められる仕事、ノルマや締め切りがある仕事です。
<てんかんの症状がある方に向いている仕事>
急な発作が起こる可能性があるため、作業が中断・延期しても問題がない仕事が向いています。
具体的には、事務やシステムエンジニア、ピッキングや仕分け、清掃、在宅でもできるWebデザイナーやクラウドソーシングなどです。
音や光に反応して発作が起こる可能性もあるため、ミスの許されない仕事や命に関わるような仕事はなるべく避けていただき、静かな環境で作業できる仕事をおすすめします。
そのほかにも、正社員で働くことが難しい方については、パートやアルバイトなどの短時間勤務での働き方や、就労継続支援という福祉サービスを利用するのもおすすめです。
しかしながら、向いている仕事に就いたあとも、長く働きつづけるためには、無理をしないように注意が必要となります。
<就職後の注意点>
- 休憩をこまめにとりましょう
仕事に慣れるまでは、休憩を多くとれるよう企業側に相談してみましょう。
負担なく体調を整えて働くためには、焦らずゆっくりと職場に馴染むことが大切でしょう。
- 業務が大変な場合は遠慮なく相談しよう
仕事の負担が大きくて体調に支障をきたした場合は、無理をせずに上司に相談しましょう。
業務を減らしたり、短時間勤務に切り替えることで無理なく働くことができるでしょう。
- 悩んだときは一人で抱えこまず専門医に相談しよう
新しい環境になかなか馴染めずに、人間関係や仕事のことで悩んだときは、迷わず専門医に相談しましょう。
一人で抱え込むと、体調が悪化しかねないので、社外に相談先を作っておくことが大切です。
まとめ
障害者雇用促進法によって、精神障がい者の方でも就職しやすくなった反面、長く働き続けることが難しいといった課題もあります。
就職を焦らずに、ご自身の体調に合わせて、無理のない範囲で働くことが大切です。
今回の記事をぜひご参考にしていただき、就職活動のお役に立てれば幸いです。