障がい者への「合理的配慮」を知っていますか?職場で取り入れられる例も!

皆さんは、「合理的配慮」という言葉を聞いたことがありますか?

東京パラリンピックで障がい者の活躍が目立つなか、多様性を尊重する社会が求められています。

今回は、そんな社会で重要になる合理的配慮についてご紹介します。

とくに障がい者の方を採用しようとしている企業の方は、合理的配慮についてよく理解しておく必要があるので、ぜひ参考にしてくださいね。

 

障がい者への合理的配慮ってなに?

障がい者への合理的配慮ってなに?
合理的配慮とは「配慮」という言葉が入っているように、それぞれの障がいの特徴や場面に応じて、調整や変更などの対応をすることをいいます。

以下でくわしく見てみましょう。

 

<障がい者差別解消法>

合理的配慮について知る前に、まずは障がい者差別解消法についてご紹介します。

障がい者差別解消法とは障がいを理由に差別することを禁止した法律で、2016年4月から施行されています。

差別の禁止はこれまでの法律でも定められていますが、この障がい者差別解消法はより具体的に差別をなくすために制定されたものです。

これまで、日本は国際的に見ても、障がい者差別禁止の法整備が遅いと言われてきました。

しかし、少しづつ障がい者の方の過ごしやすさを求める動きが強まり、今後はさらに障がい者だけではなくさまざまな個性を持った社会になることが期待されています。

 

<合理的配慮は義務>

合理的配慮の具体的な例としては、読み書きが困難な方が音声を読み上げるソフトを活用して学習できるようにしたり、車椅子を利用している方のためにスロープやエレベーターを設置したりなどがあげられます。

個性は人それぞれですが幸福を追求する権利は皆平等に持っているため、このような合理的配慮は、すべての人が自分らしく社会活動に参加するために必要です。

また、国は2021年5月に合理的配慮の提供を義務付けるよう、障がい者差別解消法を改正しています。

合理的配慮の義務化は今後3年以内に施行され、障がいのためにサービスを提供しない、障がいを理由に低賃金を設定し昇給を認めないといったことは禁止されます。

 

<合理的配慮の罰則>

義務化される合理的配慮ですが、提供しない場合の具体的な罰則は設けられていません。

なぜなら合理的配慮は、一人ひとりの個性や状況に合わせて提供されるため、一律に罰則を規定することが難しいからです。

しかしながら障がい者が合理的配慮を求めても提供されなかった場合、事案によっては損害賠償責任が請求される可能性があります。

また、各地方自治体は合理的配慮の実効性が上がらなかった場合に備え、上乗せの条例も検討しています。

 

障がい者も働きやすい職場のために!合理的配慮の例

障がい者も働きやすい職場のために!合理的配慮の例
合理的配慮の義務化により、今後職場においても障がい者が働きやすさが求められるでしょう。

そういったなかで、企業はどのように合理的配慮を提供していけばよいのでしょうか?

 

<視覚障がい者のために拡大文字や音声ソフトを取り入れる>

障がい者の方を採用する際には、募集の時点から合理的配慮を提供しなければなりません。

たとえば、視覚障がい者の方がいれば、会社説明会で募集内容や労働条件を細かく読み上げたり、質疑応答の時間も長く設けたりする工夫が必要です。

採用試験では文字の拡大や音声ソフトの利用、展示を活用した採用試験を実施したり、視覚障がい者の方の試験時間を延長したりするとよいでしょう。

採用後に拡大読書器や点字入力用キーボードを導入すれば、視覚障がい者の方も業務が遂行しやすくなりますよ。

 

<聴覚言語障がい者のために筆談やメールを利用する>

聴覚言語障がい者の面接では、就労支援機関の職員などの同席を認めることで、面接官と障がい者の方の意思疎通がしやすくなります。

同席者はハローワークの職員や特別支援学校の先生などが多く、手話による面接のフォローがあることで、障がいに関係なく本人の適性を見極めることが可能です。

採用後は日常的に身ぶりや筆談によってコミュニケーションを取り、業務指示はメールやメモを渡したり音声を文字化するソフトを利用したりすれば、業務も問題なくこなせます。

また、聴覚に障がいを持つ方は火災報知器や避難放送などに気づくことができません。

このような緊急の場合はほかの職員もパニックに陥ることが多いので、あらかじめ危険箇所や避難場所は共有しておきましょう。

危険発生の合図は音だけではなく緊急ランプなど視覚でも認識できるようにすれば、聴覚言語障がい者の方もすぐに危険発生を察知できます。


<肢体不自由のために職場での移動の負担を減らすこと>

車椅子利用者などは、移動がなるべく少ないように配慮することが必要です。

建物の一階や入り口からなるべく近いところで面接をし、すべての試験が一つの会場で完了できると障がい者の負担を減らせます。

さらに採用後は職場の通路にはなるべくものを置かない、障がい者の席を部屋の入り口近くに設置するとよいでしょう。

また、車椅子を利用している方は手が届く範囲が限定されているので、作業中に姿勢の調整がしづらいことがあります。

そのため、高さが調整できる机やキャスター付きの椅子を導入するといった工夫が求められます。

 

障がい者への合理的配慮のポイント

障がい者への合理的配慮のポイント
最後に、障がい者への合理的配慮のポイントをご紹介します。

 

<合理的配慮はわがままなのか?>

職場における合理的配慮は、会社が障がいを持つスタッフのために働きやすい環境に調整することであり、配慮の内容によっては「わがままではないのか?」と感じてしまうこともあるかもしれません。

しかし、合理的配慮は社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正すためのものであり、わがままとは完全に異なります。

たとえば、「外から帰ってきた人が暑そうにしているが、クーラーの冷気が苦手なので使用をやめてほしい。冷え性になることもあるので、クーラーではなく自然の風を入れてほしい。」と、「クーラーの冷気が苦手なので、風が直接当たらない場所に移動したい。また、自分でもカーディガンやひざ掛けを利用する。」という場合、前者はわがままで後者は合理的配慮といえます。

このように、わがままは自分のことだけを考えた主張ですが、合理的配慮は相手の立場も考えている主張です。

 

<合理的配慮は誰が決めるのか>

合理的配慮とは障がい者の方への提供されるものですが、合理的かどうかは障がい者だけが決めるものではありません。

合理的配慮は英語でReasonable accommodationといいますが、このreasonableとは自分と相手の両方にとって理にかなっているといった意味合いがあります。

そのため、合理的配慮(Reasonable accommodation)は、企業と障がい者の対話から双方にとって理解・納得できるもののことをいいます。

障がい者の方によって障がいの程度や特性が変わり、ケースも異なるので、絶対的な「合理的配慮」は存在しません。

だからこそ、合理的配慮をおこなうために一方的な要求や事情をとおすのではなく、しっかりとした対話から始めることが大切です。

 

まとめ

合理的配慮とは誰もが平等な機会を得られる社会のために、障がい者の方へ提供する配慮のこと。

合理的配慮は障がい者だけではなく提供する側の視点にも立ち、お互いにとって理にかなったものであるため、「わがまま」とは異なります。

これから障がい者の方を採用する企業は合理的配慮が求められるので、今回ご紹介した職場での合理的配慮の例を参考に、さまざまな方が働きやすい環境を目指してみてはいかかでしょうか?

 

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