注目される障がい者のみなし雇用制度とは?

「みなし雇用制度」という言葉を聞いたことはありますか?

正しくは「労働契約申し込みみなし制度」と言い、派遣労働者の保護のために2015年から施行されている制度です。

昨今のコロナ禍の影響で働き方が多様化され、現在、このみなし雇用制度が再び注目されています。

とくに、以前よりテレワークが広まったため、障がい者のみなし雇用制度についての議論が白熱しているのです。

そこで今回はみなし雇用制度とは何か、また、障がい者のみなし雇用のメリット・デメリットについて解説します。

 

注目されるみなし雇用制度とは?

注目されるみなし雇用制度とは?
ここでは、みなし雇用制度に関わる言葉や制度、障がい者雇用の現状について見ていきましょう。

 

<障がい者のみなし雇用制度とは>

そもそもみなし雇用制度とは、一体どのような制度なのでしょうか?

みなし雇用制度は、労働者の保護と雇用の安定を目的に制定されています。

違法派遣や偽装請負がおこなわれた場合、派遣先は派遣社員に対して労働契約の申込みをしたと見なされ、派遣社員が承諾すれば労働契約が成立します。

そして現在、「この制度を障がい者の雇用にも取り入れてはどうか?」という声が高まっています。

具体的には、障がい者のテレワークを支援する福祉団体や就労継続支援事業所などに業務を外注し、一定の基準を超えていれば企業の雇用や就労と見なします。

達成すべき法定雇用率に換算されるという仕組みなので、これまで障がい者の業務管理や人事管理が大変だった企業にとっても、メリットが生まれる仕組みです。

障がい者のみなし雇用は正式には導入されていませんが、企業と障がい者の双方にメリットがあるので、「導入すべきだ」という声があがっているのです。

<法定雇用率>

障がい者のみなし雇用についてさらに理解するために、「法定雇用率」についてみていきましょう。

障害者雇用促進法では障がい者の安定した雇用を守るために、障害者雇用率制度を定めています。

企業などに対し一定数以上の障がい者を雇用するように求めており、この雇用率が法定雇用率です。

法定雇用率は過去に何度か引き上げられており、2021年の3月からは2.3%になっています。

<障がい者雇用納付金制度>

障がい者を雇用するためには設備投資などのコストがかかるので、障がい者を雇用している企業としていない企業では、不均衡が生じてしまいます。

そこで国は、法定雇用率を達成していない企業から納付金を徴収し、それを助成金として法定雇用率を達成している企業に支給しています。

これを障がい者雇用納付金制度と言い、企業としても障がい者雇用の安定と促進に貢献できるのでメリットと言えるでしょう。

また、障がい者を雇わなくても納付金を払えばいいというわけではなく、法定雇用率が未達成の状態が続くと、企業名の公表や雇用率達成指導を受けることになります。

<進まない障がい者雇用の現状>

障がい者雇用の法律や制度は整備が進められていますが、実際の雇用はなかなか進んでいないのが現状です。

2020年の調査によると法定雇用率を達成している企業は48.6%で、半数にも達していません。

理由としては、社内の理解が得られないことや障がい者雇用のノウハウがないことなどがあげられ、まだまだ課題が残されています。

 

障がい者のみなし雇用制度のメリット

障がい者のみなし雇用制度のメリット
ここまで、みなし雇用制度や障がい者雇用に関わる法律などについてご紹介しました。

以下では、障がい者のみなし雇用制度のメリットについて見ていきましょう。

 

<障がい者が働きやすい環境を選べる>

企業が障がい者を1人雇用しているとカウントするためには、その障がい者の方が週30時間以上働いている必要があります。

20時間未満の場合は障がい者を雇用しているとは認められず、障がい者の方にとっても直接雇用の機会が狭められることになるでしょう。

しかし、障がい者のみなし雇用制度が導入されれば、就労継続支援事業所などで就労することが可能で、会社に出社する必要がありません。

就労継続支援事業所であればバリアフリー化されていたり、障がいに理解があるスタッフがいたりと、障がい者の方が働きやすい環境で就労することが可能です。

<仕事の選択肢が広がる>

とくに地方だと障がい者枠での求人があまりなく、サポート体制が整った都心部でないと障がい者の雇用は難しい傾向にあります。

しかし、障がい者のみなし雇用制度では地方在住の障がい者でも仕事の発注がしやすく、障がい者の仕事の選択肢が広がるでしょう。

チャレンジできる仕事の幅が広がるので、障がい者の雇用促進につながると期待できます。

<法定雇用率が達成しやすくなる>

障がい者のみなし雇用制度は、これまでより障がい者の方が働きやすくなるというメリットがありますが、企業にとっても魅力的な点は多くあります。

施設や設備改修をせずとも障がい者を受け入れられるので、障がい者雇用のハードルは下がるでしょう。

さらに障がい者のみなし雇用制度により、直接雇用以外で障がい者を雇用することが可能になるので、法定雇用率が達成しやすくなる可能性があります。

法定雇用率の未達成はたびたび問題として取り上げられているので、障がい者の雇用が進むことが考えられます。

<特例調整金や特例報奨金が支給される>

障害者雇用納付金制度では、テレワークをおこなう障がい者などに仕事を発注した場合、特例調整金や特例報奨金を助成金して支給するという制度が存在します。

法定雇用率が未達成の企業であれば、この助成金の額に応じて納付金が減額されるというメリットもあります。

障がい者のみなし雇用制度が導入されれば助成金が受け取れるほか、発注した分を法定雇用率に換算できるので、企業にとっても魅力的な制度だと言えるでしょう。

 

障がい者のみなし雇用制度のデメリット

障がい者のみなし雇用制度のデメリット
メリットが多い障がい者のみなし雇用制度ですが、現在は正式に導入はされていません。

まだまだ考慮すべき点が多いと言われ、慎重に考えるべきだという意見もあります。

では障がい者のみなし雇用のデメリットとして、どのようなことがあげられるでしょうか?

最も懸念されている点としては、障がい者の安定した雇用につながらない恐れがあることです。

障がい者のみなし雇用制度は、あくまでも直接雇用ではありません。

そのため、みなし雇用制度を利用して法定雇用率を達成しようとする企業が増えてしまうと、反対に障がい者の直接雇用の機会を奪うのではないかと懸念されています。

障がい者のみなし雇用制度は、働く環境や仕事の自由が広がることが魅力です。

しかし、このような恐れがあることから、「障がい者をはじめから直接雇用したほうがいい」「安定した雇用のためには直接雇用を促進するべき」といった意見もあります。

 

まとめ

今回は、障がい者のみなし雇用制度についてご紹介しました。

障がい者の雇用がなかなか進まない日本において、みなし雇用制度の導入は障がい者の方ができる仕事の増加や、雇用の促進が期待されています。

しかしながら、障がい者の安定した雇用にはならないとも言われ、慎重な議論が求められています。

また、企業の法定雇用率を達成できたとしても、みなし雇用制度により障がい者を社会から隔離することに繋がるかもしれません。

そのため、法廷雇用率など数字ばかりの議論ではなく、障がい者雇用のサポート体制や障がい者の方が働きやすい社会を考えていくことが大切と言えるでしょう。

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