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障がい者を雇用するにあたり、特性を知っておくことが大切です。
初めて障がいを持つ方と働くという場合には、接し方がわからず戸惑ってしまう方も多いです。
特に、知的障がいや発達障がいなどの場合、配慮すべきところが目に見えにくいことあるので、より不安や心配になってしまいますよね。
今回は知的障がい者や、発達障がい者の方たちはどのような特性を持っているのか、仕事を教える際のポイントと注意点をお伝えしたいと思います。
知的障がいと発達障がいの特性
発達障がいとは脳の先天的な機能障がいにより、18歳ごろまでの「発達期」と呼ばれる時期に社会生活や日常生活などに何かしらの原因による障がいがみられる状態のことです。
知的障がいは脳の先天的な障がいなので基本的にしつけや環境などの後天的な理由によって起こることはありません。
発達障がいは知的障がいを伴わないものもあるため、気づきにくく成人後に分かるケースもあります。
<発達障がい者の特性>
発達障がいは「精神障がい」に分類されており「精神障がい者保健福祉手帳」が発行されます。
発達障がい者支援法において、発達障がいは「自閉症・アスペルガー症候群・広汎性発達障がい・学習障がい・注意欠陥多動性障がい、そのほかこれに類する脳機能障がいであってその症状が通常の低年齢において発現するもの」と定義されています。
以下で発達障がいとされる主な障がいをお伝えします。
- ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)
特徴として、社会でのコミュニケーションや人との関わりが苦手でまた、興味や関心のあるもの、行動などが限定され独特なこだわりや反復行動が見られます。
- ADHD(注意欠陥多動性障がい)
不注意、多動性、衝動性の3つが特徴で、集中しなくてはいけないときに集中できない、注意が長続きしない、落ち着きがない、しなくていい動作や行動が多くなる、衝動的に行動してしまう、といった症状が見られます。
- LD(学習障がい)
全般的な知的発達に遅れがないものの、読む、書く、話す、聞く、計算する、推論するというような能力に困難を感じやすいと言われています。
ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)とADHD(注意欠陥多動性障がい)を併せ持つなど、異なる障がいがある場合もあります。
<知的障がい者の特性>
コミュニケーション、社会的スキル、読み書き、計算などで何らかの制約があり、IQ70以下と言われています。
平均IQが100なので、知的障がいの方は平均よりもいくつか苦手なことが見られることがあります。
特徴としては、集中力が高く単純作業でもコツコツと飽きずに取り組み、指示に対しては素直でまじめです。
また体調の波がなく、比較的勤怠が安定している方が多いです。
苦手なこととしては物事を判断することや臨機応変に対応することで、仕事のルールを覚えるには通常より時間がかかります。
また抽象的な指示やニュアンスの理解、場の空気を読むことも苦手です。
障がい者の方に仕事を教えるときのポイント
慣れない環境で、いろいろな人から説明や指示を受けると混乱してしまうことがあります。
会社の人はサポートしたいという親切心から「分からないことがあったら誰にでも聞いてくださいね。」と言うことが多いと思いますが、障がい者の方からすれば、誰に相談したら良いのか迷ってしまいます。
また、業務に直接関わっていない方に相談したり質問してしまったりして、普段のやり方でないことを教えてもらったりしてしまうこともあります。
「誰にでも聞いてね」と言ったことが逆に障がい者の方にとって難しい状況を作り出してしまうこともあるので、最初のうちは専任者、担当者を決めて質問できる体制を整えることが大事です。
このような専任者、担当者のことを障がい者雇用の中では「キーパーソン」と呼んでいます。
担当の業務に精通している人であり、業務を教える担当者として配置しておくと、障がい者の方も周囲のスタッフも働きやすい環境が作ることができますよ。
<業務の指示や伝達事項の出し方>
つい使ってしまいがちなのが、「あれ」「それ」などの代名詞です。
この表現は障がい者にとって、とても分かりにくい表現です。
また、抽象的な表現や、迷ってしまう表現なども使わない方が良いでしょう。
たとえば、業務が一段落したところで、休憩をとってもらうときに「5~10分くらい休憩してください。」と言うと、これが障がい者にとって分かりにくい表現となるのです。
5分~10分の休憩は、5分なのか?10分なのか?が分かりづらいです。
「少し」や「だいたい」を判断するのが苦手な方が多いので、こういう場合は「5分休憩をとってください。」と言うように指示を出すほうが分かりやすく、落ち着いて休憩がとれるでしょう。
ほかにも、肯定的な指示を出すことも効果的です。「○○をしてはだめです。」ではなく「△△をします。」という感じです。
たとえば、自閉傾向のある知的障がい者はピョンピョン飛び跳ねることがありますが、「飛び跳ねてはだめです。」という言い方をするのではなく、「歩きます。」と言ったほうが、受け入れやすくわかりやすい言い方です。
だめなことを注意するのではなく、望ましい行動を指示してあげると効果的ですよ。
業務の教え方としては、実際にお手本をやって見せて、次に本人にやらせてみて理解しているかどうかを確認するという方法はとても効果的です。
口頭で説明して理解できたか聞くと、理解できていなくても「分かりました」と反射的に答える人もいるため、実際にやらせてみて確認すると良いでしょう。
一緒にやってみて、できるなら一人でやらせてみるという反復をおこなうことで業務を習得しやすくなりますよ。
また、正確に業務を教えることも大事です。
障がい者の方が一生懸命やった仕事だから、とりあえず今の時点では合格とする人がいますが、これはおすすめしません。
なぜなら、障がい者の方はこの程度で大丈夫なんだと認識してしまい、後から変更すると混乱を招くことに繋がります。
合格基準が甘いと、あとからほかのスタッフがもう一度やり直す必要があるなど、二度手間になってしまうこともあるため、合格基準はあいまいにせず正確に教えるほうが職場や障がい者本人のためにも良いと言えます。
継続しているとだんだん業務にも慣れて、スピードも上がってきますので、業務を習得するのに時間はかかりますが、正確に教えてあげてくださいね。
障がいを持つ部下と接する際の注意点
障がいを持つ方と働くうえで、いくつか注意点があるのでみていきましょう。
<叱るときに人格を否定しない>
これは障がい者の部下と接することに限りませんが、人格を否定しないように気をつけましょう。
叱られ続けて自己肯定感が低下すると、二次災害として鬱症状になりやすいです。
言葉に敏感な障がい者は、上司のひと言に強く怒りを感じることがあります。
<大切なことは対面で伝える>
想像力を働かすのが苦手な方もいるので、メールだと文章の意味を誤って受け取ることが多いです。
大切なことはなるべく対面で伝えたほうが良いでしょう。
<相談して良いことを伝える>
あきらかに困った状況なのに、なかなか相談してこない場合が多いです。
人に頼ったり、相談していいのか分からなかったりする場合があるので、「何か困ったことがないか?」「いつでも相談してくださいね。」などと言った声をかけ、相談しやすい環境を作ることも大切です。
また、そのときに相談先のキーパーソンを明確にしておくと、障がい者が迷わずに相談できますよ。
まとめ
障がいの分類によって、得意不得意が分かれます。
しっかり障がいの特性を理解し、障がい者の方が安心して働けるように寄り添い、得意な部分は伸ばしてあげられるといいですね。