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「分離不安症」という症状を聞いたことがありますか?
ひと昔前まではあまり知られていなかった病名ですが、最近ではこの病気を知る飼い主さんも増えてきているといいます。
分離不安症は愛着のある人が離れてしまうことに不安を覚える精神的な病気です。
人間であれば、幼い子がお母さんと離れ離れになるのを極端に嫌がって泣き叫ぶなど。
その症状は、犬や猫などの比較的知能の高い動物でも発症する可能性があるんです。
甘えん坊な性格なんだと思い、愛犬や愛猫をついつい構いすぎていませんか?
分離不安症の場合、その接し方が逆効果になっているかもしれません。
これからペットを迎え入れる方や、現在甘えん坊さんなペットと暮らしている方は、ぜひ最後までご覧ください!
犬や猫の分離不安症の症状とは?
人間だれしも、親しい人との別れは寂しくなるものです。
それは犬や猫などの動物にもいえること。
仲間の死や別れに心が空っぽになるような気持ちがあります。
社会性のある動物なら、なおさらその気持ちが強いといえるかもしれません。
その寂しさや不安な気持ちが極度に強い場合、病的な行動が現れ分離不安症と診断されます。
分離不安症は分離不安障害ともいわれ、人間の精神疾患としては広く認知されています。
しかし、犬や猫などの動物にも分離不安がみられることも分かっているのです。
犬や猫などのペットが見せる分離不安症の症状はこちらです。
<飼い主がいないとき>
- しっぽや前足を過剰に噛んだり舐めたりする(皮が剥げてしまい、足先が赤くなっているなど)
- 吠え続ける
- 鳴き続ける
- ベッドやクッション、トイレシーツなどをボロボロにする
- トイレ以外の場所に排泄する
<飼い主がいるとき>
- 家の中でずっと後ろをついてくる
- 飼い主の動きを目で追う
- 座っていると膝の上に乗ろうとする
- ケージに入るのを嫌がる
また他にも、同じところを同じ速さでくるくる回ったり、ストレスで毛が禿げたりといった症状がみられます。
「吠え続けたり、トイレを失敗するのはしつけの問題ではないの?」
と思った方もいるでしょうか。
分離不安症の場合、普段はお利口さんなのに、飼い主がいなくなると症状を見せることが特徴です。
また、ひどくなると破壊行動や下痢嘔吐といった身体的な不調もでてきます。
放ってはおけない症状ですよね。
飼い主が見えなくなったら全力で鳴く姿は、甘えん坊で可愛くもありますが、心の病かもしれません。
飼い主がいないと声がかれるまで鳴き続けるといった行動は、依存症ともいえます。
そんなペットを放っておけず、飼い主も分離不安症に陥ることもあるのです。
犬や猫の分離不安症の原因とは?
分離不安症の原因はさまざまですが、よくいわれている原因はこちらです。
- 幼い頃に親と離れて寂しい思いをした
- 飼い主といつも一緒にいる
- 飼い主や環境に変化があった
- 人懐っこく、人が大好きな性格
- 捨て犬や捨て猫だった
- 過去に怖い経験をした
- 多頭飼育崩壊から引き取られた
- 病気で体が弱く、心の体調も崩し始めた
- 認知症になった
- 社会化が足りなかった
とくに注意したいのは、保健所や団体から保護犬や保護猫を引き取ったケース。
これらのペットは過去に人に捨てられた経験や、生まれてすぐ親や兄弟と引き離されて育った場合も珍しくないためです。
分離不安症は心の病。
「また捨てられるのでは」
「ひとりになってしまうのでは」
といった不安な気持ちが原因となっています。
また、犬や猫など動物側だけでなく、人間側が症状を引き起こしているケースもあります。
それが、四六時中常に生活を共にしていること。
- テレビを見たり趣味の時間を楽しんでいるときも、ペットを抱っこしている
- 帰ってきたときは大袈裟に愛情を注いでいる
これらは、ペットの分離不安症を誘発する行動なのです。
可愛くて構いたくなる気持ちは、とてもわかります。
とくに子犬や子猫の時期は一日中付きっきりでお世話したくなりますよね。
お留守番させるのも心配です。
でも、社会化にあたる時期から適切な距離感を保たなければ、お互いが依存的な関係になってしまいます。
分離不安症の治し方はペットとの適切な距離感を保つこと
分離不安症は心の病。
ペットと寄り添っていきながら、どうしたら不安な気持ちを取り除いてあげられるか考えましょう。
まず考えたいのが「本当に分離不安症なのかどうか」です。
これは病気の一種であり、獣医さんに診断してもらってはじめてわかるもの。
症状が少し当てはまるだけで過剰に「うちの子分離不安症かもしれない」と心配する方もいます。
自分でも簡易的な診断はできますが、動物のプロではないので信用してはいけません。
分離不安症に近い症状で悩んでいるほとんどの方が、「分離不安症予備軍」だったケースもあります。
そこでまずは、基本的なしつけや運動ができているかセルフチェックしましょう。
症状にも現れる「トイレを失敗する」「吠え続ける」などは、しつけがしっかりできていないことによるものかもしれません。
子犬や子猫の時期なら十分にありえることです。
また、親(飼い主)と離れて寂しいと感じる気持ちは、子犬や子猫の時期はよくあること。
症状だけで判断するのではなく、ペットの年齢や生い立ちなども考慮に入れて判断してみましょう。
しつけ以外に着目したいのが運動や遊びの点です。
人間より運動量が多い犬や猫。
日中の運動量は適正ですか?
遊び足りなくて体力が余っていれば、クッションをかじったり、飼い主に遊んでほしくて後ろをつけて回るのかもしれません。
ペットの生理的欲求で不足しているものはないか、日常生活を見直してみましょう。
その上で、分離不安症が悪化しないように対策をとることをおすすめします。
飼い主側がしてあげられる対策のひとつは「家の中で別々に過ごす時間をつくること」です。
依存性を高めないために、仕事・趣味・食事・睡眠といった時間は別々に過ごしてみましょう。
新型コロナウイルスの影響もあり、在宅勤務の時間が増えた方の中には、普段よりペットに構いすぎてしまっている傾向もあります。
常に家に飼い主がいることに嬉しさを感じるペットですが、ずっと一緒の喜びを味わいすぎるとお留守番などで離れた時間に、より不安を感じるようになります。
適度な距離感を保つことが大切なのです。
そのため、「仕事中は構わない」「テレビを見ているときは抱っこしない」など少し離れる時間も設けてみましょう。
それができるようになったら、数秒や数十秒違う部屋に移動してみます。
ペットは「帰ってこないかもしれない」と不安になっているため、「出かけても必ず帰ってくるよ」と分からせるのが効果的。
最初のうちは鳴いたり吠えたりするかもしれませんが、だんだんと感覚を長くして慣れさせていきましょう。
ペットがひとりで我慢できたら、さりげなくほめてあげるのもよいです。
そしてお留守番をさせる際は「お留守番寂しくない?」と弱気な声をかけず、飼い主が「離れるのは当たり前のこと」と堂々としましょう。
ひとりでいることに自信をもたせると、不安な気持ちは改善されていきます。
帰宅時に「お留守番頑張ったね!」と大げさにはしゃがないこともポイントですよ。
まだお留守番に慣れない間は、ケージに飼い主の匂いのついた衣類やタオルをたくさん入れて、不安にさせないようにするなどの工夫もできます。
また、ペットシッターなどのサービスを利用してみるのも、距離を保ってみる手段としてはいいかもしれません。
まとめ
分離不安症の場合、一緒に過ごせば過ごすほど症状を悪化させてしまいます。
症状の改善方法は、徐々に距離をあけること。
幼い頃からペットとの適切な距離感を保つことで、精神的にも強い子に育つものです。
ペットと飼い主お互いが幸せと思える関係を築けると、素敵なパートナーとなれますよ。