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2020年は、改正された動物愛護法の施行がはじまる年です。
動物愛護法は、これまで1999年、2005年、2012年に法改正されてきました。
そして直近では2019年に再度改正され、2020年6月より順次施行されています。
今回は、2020年より施行される動物愛護法の改正内容についてご紹介します!
改正前と比べてどう変わったのか知りたい方は、ぜひチェックしてくださいね。
また、動物愛護に関連して、動物福祉についても説明しています。
家畜やペットたちの福祉は、どうやったら実現できるのか…。
一緒に考えてみませんか?
2020年の動物愛護法改正で変わったこと
動物愛護法が新しくなったことはご存知ですか?
2019年の6月に「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」が交付され、今年の6月から順次施行がはじまっています。
改正された内容はさまざまですが、今回は主にこの3つをご紹介します。
①犬猫の販売日齢の規制(2021年までに施行予定)
生体販売の規制を強める目的で改正されました。
現在、犬や猫の販売は生後49日を経過したら可能となっています。
しかし、改正後は生後56日を経過しないと販売できないことになりました。
犬や猫は、生後はやい段階で家族から引き離されると、免疫力が低下したり社会性が身につかないといわれています。
免疫力は、母犬や母猫に育てられることで高まります。
社会性は、社会化期とよばれる時期に親や兄弟などとさまざまな環境ですごすと身につきます。
犬の社会化期は約3~12週、猫は約2~7週。
この時期に家族の中でのびのびと育つことが、犬や猫にとって健康面でもしつけ面でも大切になります。
そのため、最低でも8週(56日)を超えるまでは、販売を規制するような法律に改正されたんですね。
ただし、天然記念物に指定されている日本犬は、これまでどおり生後49日を経過すればよいことになっています。
②犬猫の繁殖業者にマイクロチップの装着・登録を義務化(2022年までに施行予定)
動物愛護の観点から、大きな1歩となった法律がこちらです。
これは、ブリーダーやペットショップなどの第1種動物取扱業者に義務づけられる法律です。
しかし、一般の飼い主も「できる限り装着するように努力すること」が期待されます。
またマイクロチップを装着した場合は、一般の飼い主も登録が義務づけられますよ。
マイクロチップの装着・登録は、災害時や飼育放棄の減少に効果があるといわれています。
マイクロチップを読み取ることで、犬や猫の身元がわかります。
万が一迷子になったときや災害時で飼い主とはぐれてしまった場合でも、登録者の元まで無事に送り届けられるんですね。
また、マイクロチップを装着・登録していれば、無責任に飼育を放棄した飼い主は身元がばれます。
ペットの命を守る観点からも、マイクロチップの装着は一定の拘束力があるといえるでしょう。
③動物虐待の定義の明確化と罰則強化(2020年6月1日施行)
今回の改正で、動物への虐待などに対する定義が具体化され、罰則も強化されました。
動物虐待の定義は「積極的虐待」と「ネグレクト」が明記されています。
・積極的虐待とは
愛護動物に対し”みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること”(法第44条の2)
つまり、やってはいけない行為をすること、させることが積極的虐待です。
殴る、蹴る、熱湯をかけるなどの身体的暴力。
脅しや、怒鳴りつけるなどの心理的に恐怖を与える行動。
主にこれらが意図的に行われている場合は、積極的暴力とみなされます。
・ネグレクトとは
ネグレクトは積極的虐待とは違い、しなければならない行為をしないことです。
”飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること”(法第44条の2)
条文ではこのように記されています。
たとえば、エサをあげない、散歩などの健康管理をしない、病院へ連れていかないなどの行為がネグレクトです。
つまり、動物が健康に生きていくためにしなければならないお世話をしないことは、ネグレクトにあたります。
ネグレクトは積極的な暴力ではありませんが、これも虐待のひとつなので懲役や罰金が科されます。
罰則の強化については、改正前と後でこのように変わりました。
・愛護動物をみだりに殺したり傷つけたりした者
改正前:2年以下の懲役又は200万円以下の罰金
改正後:5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
・愛護動物をみだりに虐待した者、愛護動物を遺棄した者
改正前:100万円以下の罰金
改正後:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
他にもこのような項目が改正されています。
・適正飼育が困難な場合の繁殖防止の義務化
・獣医師による虐待の通報の義務化
・不適切な飼育により周辺の生活環境が損なわれている場合、都道府県知事による指導、助言、報告徴収、立入検査などができる
・自治体の措置として、動物愛護管理担当職員の拡充
「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」について詳しく知りたい方は、こちらの環境省のHPを確認してください。
動物福祉について
動物福祉とは、動物の心理学的幸福を実現する考え方のこと。
もう少し噛みくだいて説明すると、動物が身体的・心理的にストレスを感じることなく幸せにすごせる環境を実現しようとするものです。
アニマルウェルフェアともよばれます。
では、どのような考えが動物福祉の基本になっているのでしょうか。
ここでは、国際的に定められた「5つの自由」をご紹介します。
1922年にイギリスの専門委員会が提案し、国際的に認知されている基本方針です。
家畜動物だけでなくペットや実験動物など、飼育下にある動物の福祉の基本として考えられています。
①飢えと渇きからの自由
動物の種類や年齢にあった栄養のあるエサ、きれいな水を適切に与えていることが大切です。
②不快からの自由
動物が快適にすごせる環境を用意できているかどうかです。
雨風にさらされる場所や清潔に保たれていない場所などは、動物にとって不快な環境です。
③痛み・負傷・病気からの自由
動物が病気にならないよう、健康管理に努めることが飼い主の役割だと考えられています。
また、ケガや病気があれば、適切な治療をさせましょう。
④恐怖や抑圧からの自由
動物が、精神的な苦痛やストレスを受けていないかチェックすること。
そして苦痛を受けていた場合は、適切に対応をとることが大切です。
もちろん、飼い主自身も動物に対して心理的な恐怖や抑圧を与えてはいけません。
⑤本来の行動がとれる自由
動物らしい行動や表現ができるような環境を用意してあげること。
本能や習性にあわせた行動をとれていることが、動物福祉の実現につながります。
人間にあわせた環境で生活することは、動物にとって生きにくさを感じる要因になるでしょう。
これら5つの自由の実現は、動物の基本的なニーズ(欲求)を満たしてあげることにも重なるでしょう。
ペットを飼っている方は、これらを満たせているかどうか見直してみてください。
動物を人間の都合だけで可愛がることは、動物福祉を実現しているとはいえません。
「動物にとってのしあわせとは何か」を考えて接することが、大切だとわかりますね。
参考:環境省
まとめ
いかがでしたか?
今回は、動物愛護法の改正内容と動物福祉についてまとめてみました。
日本はヨーロッパなどの先進国と比べて、動物愛護の考えが遅れているといわれています。
2020年の動物愛護法の改正で、少しずつ追いついていけたらいいなと思います。
また動物福祉の問題は、動物に興味がない方にも知ってほしい内容です。
動物福祉の考え方を知ると、動物愛護法の改正意図もみえてくるものがありませんか?